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【2025年法改正対応】外皮計算の重要性と設計実務への影響|全建築物に省エネ義務化

2025.06.02

2025年4月、建築基準法および建築物省エネ法が大幅に改正されました。今回の改正で最も大きなポイントのひとつが「原則として全ての新築建築物に対する省エネ基準適合の義務化」です。これにより、住宅・非住宅問わず、外皮性能の確保が設計初期段階から必要となり、外皮計算(UA値・ηAC値)の重要性がこれまで以上に高まります。

この記事では、外皮計算の基礎から2025年改正の具体的な変更点、設計実務での対応策までを詳しく解説します。

外皮計算とは何か?

外皮計算とは、建物の断熱性能や日射遮蔽性能を評価するための計算であり、省エネ基準への適合判定に不可欠です。主に以下の2つの指標を用います。

UA値(外皮平均熱貫流率)

建物の外皮(屋根、壁、床、開口部など)から失われる熱量を外皮面積で割った数値で、値が小さいほど断熱性能が高いことを意味します。(室内と外気の熱の出入りのしやすさがわかります。)

  • 単位:W/㎡K
  • 地域区分ごとに基準値が定められており、寒冷地ほど厳しい値が求められます。

ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)

開口部から取得する日射熱量と、開口部以外から日射の影響で熱伝導により取得する熱を評価した冷房期の指標で、値が小さいほど冷房負荷を抑えられる設計になります。(太陽日射の室内への入りやすさがわかります。)

  • 単位:なし(比率)
  • 南面の開口部面積や庇の設計、Low-E複層ガラスの有無などが大きく影響します。

2025年4月の法改正ポイントと外皮計算への影響

1. 省エネ基準適合が全建築物に義務化

これまで300㎡未満の住宅については「省エネ基準への適合」は努力義務でしたが、2025年4月以降はすべての新築建築物が義務化対象となりました。

対象となる性能基準(住宅の場合)

  • 外皮性能(UA値・ηAC値)
  • 一次エネルギー消費量(BEIによる評価)

これにより、木造戸建住宅を含む全ての計画において、外皮計算の提出が前提となります。

※出典:国土交通省「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」
https://www.mlit.go.jp/common/001627103.pdf

2. 増改築にも一部適用

既存建築物の増築や大規模改修についても、対象部分に対する省エネ基準への適合が求められるようになります。ただし、既存部分全体ではなく、増改築部分が対象です。


外皮計算の実務上の注意点

計算ルートの選択

外皮性能の評価には以下の2ルートがあります。

■ 標準計算ルート

詳細な断熱材厚みや熱貫流率を入力し、各部位の面積ごとに正確に計算する方法。高精度で信頼性が高いが、入力項目が多く作業負担が大きい。

■ 仕様ルート(簡易法)

定められた仕様(例:開口部比率、断熱材厚みなど)が基準に適合するかで判断する方法。概算だが、設計初期段階での検討に向く。

地域区分と基準値の理解

UA値・ηAC値の基準値は、全国を8つの地域区分に分けてそれぞれ異なる数値が設定されています。特に寒冷地(1~3地域)は厳しいUA値基準が設けられています。

地域区分UA値の基準(W/㎡K)ηAC値の基準
1地域(北海道北部)0.46以下1.9以下
6地域(関東南部)0.87以下2.8以下
8地域(沖縄)6.7以下

※出典:国土交通省「住宅・建築物の省エネ基準について」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr2_000020.html


設計段階での外皮対応戦略

1. 開口部計画の見直し

開口部の面積や配置はUA値・ηAC値に大きく影響します。可能な限り南面の開口部を最適化し、東西面の開口部を小さくする設計が有効です。

2. 高性能建材の採用

断熱材の性能だけでなく、Low-E複層ガラスやトリプルガラス・アルミ樹脂複合サッシや樹脂サッシなどの採用により、外皮性能の向上が見込めます。

3. シミュレーションツールの活用

国土交通省監修の「住宅省エネルギー性能計算プログラム(WEBプログラム)」などを使うことで、計画段階から性能を可視化・検証できます。

■ WEBプログラム:
https://www.kenken.go.jp/becc/house/app.html

まとめ|早めの外皮対応が設計の差を生む

2025年4月の法改正により、外皮計算はすべての新築住宅において「必須」となりました。従来以上に精度が求められるため、設計初期からの対策が不可欠です。

  • 計画初期に仕様ルートで概算
  • 計画確定後は標準計算で精査
  • 地域区分と基準値を常に確認
  • 高性能建材と開口計画の工夫

これらを的確に行うことで、省エネ性能の確保と設計の自由度を両立させることが可能です。

外皮計算に関するご相談はワークス・ワンまで

弊社ワークス・ワン設計部では、外皮性能計算から省エネ基準適合のためのトータルサポートまでご提供しています。設計段階での外皮計算、適判書類の作成等にお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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参照元(公的機関)

大賀信幸
当ブログの監修
一級建築士大賀信幸
株式会社ワークス・ワン 代表取締役。
関西大学工学部建築学科を卒業後、1999年11月15日に株式会社ワークス・ワンを設立。
その後、物流事業、不動産管理・運用、職業教育や知財に関する事業など、幅広く活動。
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